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劇団劇作家ブログ
現在、劇団劇作家に参加している劇作家がお送りする日常のあれこれ
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2009年11月30日 (月) 22:38 | 編集
映画の題名と細かなストーリーを忘れてしまったのだが、心にひっかかっているラストシーンがある。
ヨーロッパの近代的な空港から、男女の乗った飛行機を見送る娼婦。
娼婦はその国で体を売って生活している。映画の中で性病を移される(もちろん移している)男たちが出てくるし、稼ぎ先のホテルの従業員に「仕事が早く終わったら頼むよ。」と簡単にオーダーされる。娼婦は明るいキャラクターに設定されているから、いわゆる陰惨さはにじませないのだけれど。
彼女が見送っていたのは、本国ではエリート医師だった黒人男性と、イスラム圏の若い女性。どちらも訳ありで不法滞在、ゆえに差別的な視線を浴び、最低賃金の仕事をしている。娘は雇用と引き換えに雇い主の性欲のはけ口にさえなる。
ドラマは、二人が臓器売買を通じて出会うところで展開する。闇商人がいて、エリート医師の過去をネタにゆすり、秘密の手術を依頼する。娘はその商人にレイプされる。その二人に同情した娼婦は、危険を顧みず、体を売る合間に二人の手助けを買って出る。
と、もうずっとひどい話が続くのだが、最後は医師と娘がそれぞれの母国に帰るというハッピーエンド。そのラストシーンが、娼婦のガラス越しの顔。そう、いろんなことが解決して、それぞれの名誉や生活が回復され、祖国に戻っていく中、二人に損得抜きで力をかした娼婦の状況だけが全く変わっていない。
彼女は今夜も、経済的には豊か、文化的には高尚とされる先進国の街角で「へい、あいていたら頼むぜ。」と男に買われるのだろう。
「あんたたちはいいわよね、抜け出せて。」と言わない娼婦だけに、彼女の全く変わらないであろう日常が気になって仕方がないのだ。

有吉朝子
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