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劇団劇作家ブログ
現在、劇団劇作家に参加している劇作家がお送りする日常のあれこれ
エノケン・ロッパの時代
2011年03月15日 (火) 22:32 | 編集
 探している本は必要な時には出てこない、という法則が、私にはある。
 そのおかげで私の家では、しばしば資料用の同じ本が、必要のない時に、2冊、3冊と出てくることがある。
 今もその状態だ。必要ないのに出てきた状態ではない。必要なのに出てこない方だ。なにに必要なのかというとこのブログを書くのに必要だ。なので探している。と、最初の法則が顔を出す。
 探している本を買ってから書いた方がいいのかもしれない。でも早く書きたい。なので、記憶で書くことにする。

 
 『エノケン・ロッパの時代』、という本にあったエピソードだと思う。
 東京大空襲の後、エノケンの友人達かなにかが、家が焼けてしまったエノケンを訪ねた。さすがに落ち込んでいるだろうと思ってみると、彼が焼け残った(というか焼けないが)、沓脱石に腰を下ろしている。近寄ると、ぽつんと、「舞台やらなきゃな」と呟いたという。
 
 舞台は確かどこかの公園かなにかの仮設舞台かなにかで行われたと書いてあったように思う。
 その舞台を観た観客の一人の感想に、こんな内容の言葉があったと思う。
 「舞台を観ながら私は笑った。まるで、自分が、この場にいる人たちが、生きている、ということを確認するかのように笑った」


 また、こちらは本の名前すら覚えていないが、西條八十やサトウハチローのことを書いたなにかの本にあったと思う。
 これも確か、東京大空襲の後の焼け野原だったと思う。夜、避難していた場所かなにかで、泣き出した子どもに苛立った男が母親に怒鳴った。そのとき、ある男がハーモニカを吹き出した。それはいわゆる俗曲だった。(曲名は覚えていないがしみじみしたメロディラインの曲だったと思う)。みんながふーっとハーモニカの男の方を向き、その曲に聴きいった。子どもの泣き声に苛立っていた男は、静かに座った。そんな話だったと思う。

 
 東京大空襲の後にも、笑いがあっていい。あった方がいい。ハーモニカがあっていい。歌があっていい。音楽が、絵が、踊りが、人形が、物語が、芝居が、あっていい。あった方がいい。と、思う。
 

 これも私の、個人的な思いだけれど。


  篠原久美子

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