2012年04月17日 (火) 22:09 | 編集
早朝バイトの帰り道、近所の方が高枝切り鋏を持って玄関から出てこられたところにお会いしたので、普通に「お早うございます」とご挨拶をした。すると、「夏みかん、持って行かれませんか?」というお返事。「いえいえ、そんな申し訳ない」「いえいえ、うちもたくさんなるので持って行っていただけると助かります」といった、実に日本人らしい会話の末に、その方は高枝切り鋏を器用に操作し、コトンと見事に二つの夏みかんを、歩道の側に落として下さった。
拾い上げるとまだ葉の付いた二つのいのちは、私の手の中で柑橘系独特の爽やかな匂いを放って、私の目と鼻を開かせた。
「酸っぱいですからね、マーマレードにして召し上がって下さい」
家に帰ると早速、ネットで「夏みかんのマーマレード」のレシピを検索し、台所に立った。
「必要な物」の項目にあった「種を入れる出汁用の袋など」が無かったので、手ぬぐいを切って小さな巾着まで縫った。縫い物の苦手な私には信じられないことだ。なにしろ、高校時代、文化祭のバザーに出すクッションを木工用ボンドとホチキスで仕上げ、友人から「小道具か!」とツッコミを入れられた伝説を持つ裁縫嫌いなのだ。なのになぜか、小さな種も出ないようにと縫い目を細かくしたり、紐を通すところをまつり縫いしたりしている。しかもそれが楽しい。これはほとんど奇蹟ではないか、妙に嬉しくなってくる。
マーマレードは時間がかかる。身をすくい取ってジュースを搾って皮をむいて千切りにして、その皮を水を換えながら5回くらい絞り洗いして2時間おいて…。でも、楽しい。絞り洗いをする手に夏みかんの香りが移るのが嬉しい。その手を嗅いでみると体の中に夏みかんの風が吹く。中火でグラニュー糖を少しづつ入れながら、ずっとかき回し続けているのも楽しい。熱で上がるほのかな蒸気の中に、さっきまでとは違う香りになってきた夏みかんを肌で感じる。毛穴が匂いを楽しんでいるのが分かる。

そうして出来た、夏みかんのマーマレードの写真です。二瓶弱、出来ました。
手前にあるのが、手ぬぐいで作った、種入れ用の巾着です。
さっそく、何も付けずに焼いたトーストにたっぷり乗せて食べました。
春のいのち、ごちそうさまでした。
でも、どうしてこんなに楽しかったんだろう…。
それは、締め切り前だからです…。
篠原久美子
拾い上げるとまだ葉の付いた二つのいのちは、私の手の中で柑橘系独特の爽やかな匂いを放って、私の目と鼻を開かせた。
「酸っぱいですからね、マーマレードにして召し上がって下さい」
家に帰ると早速、ネットで「夏みかんのマーマレード」のレシピを検索し、台所に立った。
「必要な物」の項目にあった「種を入れる出汁用の袋など」が無かったので、手ぬぐいを切って小さな巾着まで縫った。縫い物の苦手な私には信じられないことだ。なにしろ、高校時代、文化祭のバザーに出すクッションを木工用ボンドとホチキスで仕上げ、友人から「小道具か!」とツッコミを入れられた伝説を持つ裁縫嫌いなのだ。なのになぜか、小さな種も出ないようにと縫い目を細かくしたり、紐を通すところをまつり縫いしたりしている。しかもそれが楽しい。これはほとんど奇蹟ではないか、妙に嬉しくなってくる。
マーマレードは時間がかかる。身をすくい取ってジュースを搾って皮をむいて千切りにして、その皮を水を換えながら5回くらい絞り洗いして2時間おいて…。でも、楽しい。絞り洗いをする手に夏みかんの香りが移るのが嬉しい。その手を嗅いでみると体の中に夏みかんの風が吹く。中火でグラニュー糖を少しづつ入れながら、ずっとかき回し続けているのも楽しい。熱で上がるほのかな蒸気の中に、さっきまでとは違う香りになってきた夏みかんを肌で感じる。毛穴が匂いを楽しんでいるのが分かる。

そうして出来た、夏みかんのマーマレードの写真です。二瓶弱、出来ました。
手前にあるのが、手ぬぐいで作った、種入れ用の巾着です。
さっそく、何も付けずに焼いたトーストにたっぷり乗せて食べました。
春のいのち、ごちそうさまでした。
でも、どうしてこんなに楽しかったんだろう…。
それは、締め切り前だからです…。
篠原久美子
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